聴神経にできる良性腫瘍

女性

わずかな隙間に神経集中

聴力低下や耳鳴りなど聴覚異常を伴う病気の原因には、耳と脳の2通りが考えられます。そのうち脳に原因があるケースの大半は、聴神経腫瘍と呼ばれる良性の脳腫瘍です。聴神経腫瘍は脳腫瘍の中でも比較的症例が多く、決して珍しい病気ではありません。良性とは言え、重要な神経の集中する場所に腫瘍が生じるため治療の難易度は高くなります。悪性腫瘍と違って成長速度が遅いことから、聴神経腫瘍が見つかっても必ず治療が必要だというわけではありません。特に高齢者ではやがて腫瘍が小さくなる例すら見受けられます。症状が表れていなければ積極的には治療をせず、経過観察を選ぶ場合も多いものです。聴力低下や耳鳴り・めまいといった症状が見られれば、手術や放射線治療が選択されます。聴神経が位置しているのは、小脳と脳幹のわずかな隙間です。その狭い領域には他にも顔面神経や三叉神経・舌咽神経・迷走神経など、大事な神経が多く集中しています。手術で腫瘍を摘出する際には、それらの神経を傷つけないよう電気生理的モニタリングを行ないながら手術を進めます。50例以上の聴神経腫瘍手術実績を持つ熟練の外科医なら、そんな難手術も安心して任せることができます。

1回照射と分割照射

造影剤を使ったMRIやCTスキャンの画像検査の結果、聴神経腫瘍が3センチ以下と判明すれば放射線治療も可能になります。手術と違って頭蓋骨を切開する必要がないため、聴神経腫瘍治療でも負担の軽い放射線治療が主流です。放射線治療にはガンマナイフを使った1回照射と、複数回に分けて実施する分割照射の2種類があります。このうち1回照射で使われるガンマナイフとは、脳腫瘍の治療で最も多く使われる定位放射線照射装置です。頭蓋骨を器具で固定するのに痛みを伴うため麻酔も必要ですが、脳の正常細胞を傷つけず腫瘍に集中して照射することができます。ガンマナイフは腫瘍のサイズが比較的小さい場合に向いた方法です。分割照射ではノバリスやリニアック、サイバーナイフといった放射線照射装置が使われます。腫瘍のサイズが比較的大きくても治療成績が良好な点が分割照射の特徴です。三叉神経への影響も少なく、聴力温存確率は1回照射より高いというデータもあります。手術を含めた治療方法の選択は、腫瘍の大きさや患者さんの年齢などを考慮して決められます。手術を受ける場合は実績の豊富な外科医を、放射線治療なら最新設備の整った病院を選ぶといいでしょう。